講座レポート

主催事業「 つなげよう防災女子力 ~東北に学ぶ、未来をつくる~ 」

実施日・講師

2014年11月8日(土) 14:00~16:30
〈基調講演〉
  相川 康子(特定非営利活動法人NPO政策研究所 専務理事)
〈パネルディスカッション〉
  相川 康子
  加藤 志生子(エル・パーク仙台 館長)
  丹羽 麻子(NPO法人ウィメンズスペースふくしま)
  西村 寿子(一般財団法人とよなか男女共同参画推進財団 事務局長)
〈特別報告〉
  小倉 博(豊中市危機管理室)

講座紹介

イラストイメージ “つなげよう防災女子力~東北に学ぶ、未来をつくる~”
1995年1月17日の阪神・淡路大震災、豊中市は中南部を中心に大阪府内最大の被害を受けました。この経験を背景に、すてっぷは2011年3月11日の東日本大震災後、いち早く豊中市や市民とともに「とよなか女性防災 プロジェクト2011」を立ち上げました。国際的にも「災害対策のすべてのプロセスに女性が参加することが災害に強いコミュニティをつくることにつながる(兵庫行動枠組)」と提起されるなど、「女性と防災」は大きなテーマになっています。  今回の「とよなか女性防災プロジェクト2014」(内閣府助成事業)は、市民参加で「女性と防災を考える会」をつくり、豊中市地域防災計画に提言 します。そのため、11月8日に開催されたシンポジウムでは「なぜ、男女共同参画の視点なのか」を阪神・淡路大震災以降の経過や災害時の女性支援 の実践から学び、続く11月27日の「防災ワークショップ」では提言に盛り込 む内容、市民の取り組み、男女共同参画センターの役割について話し合いま した。ここでは、11月8日のシンポジウムの概要をお伝えし、地域防災における男女共同参画の視点の大切さを考えます。

【基調講演】
◆「1.17から3.11へ、 女性防災の歩み」◆ 相川 康子 ((特活)NPO政策研究所専務理事)◆

 阪神・淡路大震災以降の災害では徐々に男女共同参画の観点から取り組みがなされるようになり、東日本大震災では、政府方針(復興基本法、復興構想会議 「復興への提言」、災害対策本部「復興の基本方針」)などに当初から男女共同参画の視点が盛り込まれ、民間レベル でもこれまでなかった動きがおこりました。しかし、それが現場に十分に届いているとは言えません。  なぜ、男女共同参画の視点が必要なのか。第1に想定外におこる災害では、一人ひとりが指示待ちではなく自分で 判断できる人材にならねばなりません。第2に、長期にわたる復旧・復興には、すべての人の参画が必要です。第3に 「非常時だから」と我慢を強いられ、女性やマイノリティの人権問題が潜在化 しがちだからです。  しかし、防災会議委員や消防団員、地域の自主防災組織のリーダーなどに 女性はまだまだ少ないのが現状です。被災地の復興計画も、男性中心の場で決められてしまい、意見を言えなかった女性たちの「取り残され感」が心の復興を遅らせました。  過去の災害からの教訓として、女性や災害時要援護者らに対して①災害時に不可欠なニーズを満たし、不利にならないようにする、②防災・減災・復興の主体となるようエンパワメントする―という2つの視点を両立させることが重要です。  女性が参画することで何を変えるのか。それは、健常な男性の視点や価値観だけで考えがちな災害対応に「別の視点」を持ち込むことだと考えます。

◆女性支援の流れをつくる ◆丹羽 麻子 (NPO法人ウイメンズスペースふくしま)◆  
 震災直後に三重県から福島県郡山市に転居し、郡山市の避難所「ビッグパレッ トふくしま」で市民とともに女性支援活動に関わりました。福島県は地震に加えて原発災害もあり、非常に複雑な状況です。4月から避難所で「女性専用スペー ス」の運営が始まりました。私は「相談」が必要になると考えていましたが、ようやく9月から「女性のための電話相談」 (東日本大震災女性センターネットワーク事業)、続いて「東日本大震災被災地における女性の悩み・暴力相談事業」(内閣府事業)が岩手県・宮城県・福島県の3県で始まりました。そして、翌年7月にNPO法人「ウイメンズスペースふくしま」の設立にこぎつけました。このように、官民共働で男女共同参画社会づくり に取り組むモデルケースのひとつに なったことは、成果ではないかと考えています。  旧来の性別役割分業における妻・母役割が強化されています。「母子避難」はその代表格です。そのうえ水を飲むのも避難するのも自己責任、家族の安全 を守るのはお母さんと言われても、「嫁なんか黙っとれ」と言われ続けてきた 女性たちにとって、メンタリティが追い付かないのも当然です。職を失い、貧困や居場所の喪失感に苦しむ女性も多い。先が見えない不安は男性も同じで、それがDVとなって女性に向かうケースも多発しています。

◆備えるものは「話し合える関係性」◆加藤 志生子(せんだい男女共同参画推進財団 エル・パーク仙台館長)  
 地域で必要とされるセンターであるために、課題解決型の事業を積み重ねてきたことが、東日本大震災後の支援に 際し、女性ニーズをくみ取る力につながりました。  3月11日は、仙台市の沿岸部が津波 で大変な被害をうけていることも知りえず、職員全員呆然としていました。通信手段も無い中で、その場にいる職員で 話し合って必要なことを一つひとつ決 めていきました。  相談電話「女性のための災害時緊急ダイヤル」、「女性支援ポータルサイト」、「こころと暮らしの立ち直りを支援するスペース」などセンターを拠点にした女性支援に取組みました。被災者に寄り添い、「前進」や「がんばれ」を押しつ けない配慮をしました。  支援事業「せんたくネット」は、避難所で洗濯ものに困っているという女性の声を聞いて立ち上げました。これは、 洗濯代行にとどまらず避難所の女性ニーズをくみ取って事業化し、一緒に解決するネットワークです。ニーズがあるのかという問いもありましたがまず始めて、やり方は柔軟に変えていくことを基本にスタートさせました。  もう一つ10代の女の子たちに自分が 大切にされていることを伝える「ガールズプロジェクト」に大学生や専門学校 の学生と取り組みました。2つのプロ ジェクトは、支援される人だけではなく、支援したい人のためのものでもありました。支援を「する」側に立つことで、人は力を取り戻せると感じました。  事業を通して明らかになったのは、支援する側に視点がなければ、そこにあるニーズも見えないということです。 震災を通じて、ふだんの生活が男女平等になっていないのに、災害時にそうできるわけがないと痛感しました。女性 が地域で力を発揮するために、仙台版防災ワークショップ「みんなのための 避難所づくり」に取り組んでいます。自分の意見を言い、それが伝わったという体験をすると、人は積極的に話すようになります。「話し合える関係性」こそ、 平時から備えておきたいもの。それが 災害に強い地域づくりにつながると 思います。

【いま、豊中市民に伝えたいこと】
相川:地域防災のポイントは旧来の性別役割意識にとらわれず、当事者参加を大事にしながら、柔軟にできることをすることです。女性もハザードマップの見方や避難所設営のノウハウなどを学び、防災・復興計画に積極的にかかわっていくべきです。大事なのは地域の特性や現状を直視すること。地縁組織の加入率の低下や避難所に行けない人・行かない人の増加などを踏まえ、地域内で使える資源を再構築する必要があります。
丹羽:インフラ整備による復興が優先し、一番大切な「人の復興」は後手に回りがちです。被災者でありながら支援者として走り続ける自治体職員の疲労も強く、そんな余裕がないのも現状です。だからこそ、防災計画における相談事業や支援者支援事業の記載、女性センターの役割の明確化など、復興と防災には男女共同参画の視点が欠かせません。
加藤:すてっぷも含め、地域にある男女共同参画センターを災害時の女性支援の拠点にしていただきたいと思います。すでに地域のなかには後ろから遅れる人がないように見守る女性リーダーがたくさんいます。その力を社会的に見えるようにするのもセンターの仕事です。「わたしたち女性には社会を変える力も責任もある」(2012年仙台市「日本女性会議」)のですから。

【特別報告】
◆大槌町での支援を 地域防災に生かす◆小倉 博(豊中市危機管理室主幹)
 
 豊中市は、発災直後に緊急消防援助隊として活動して以来、岩手県大槌町の支援を継続しており、私も防災業務の支援で5か月間勤務しました。津波被害の程度は地域によって大きく異なり、被害の程度等により住民間に大きな溝ができました。   避難所となった県立大槌高校では、高校生が運営の中心となり、水汲みや炊き出し、もめ事の解決にも取り組む姿は大人たちを勇気づけました。復興でも重要な役割を果たす彼らのもとに、豊中市内の高校生がボランティアバスで訪 問し、多くのことを学んでいます。

【シンポジウムからワークショップへ】  
 シンポジウムでは、女性の視点の必要性が次のように指摘されました。①ふだん男女平等社会になっていないからこそ、 防災も含め多様な領域に当事者として参画する責任がある。②対等な関係で話し合える地域が災害に強い。③地域にはすでに中心になる女性リーダーがいるので、そのリーダーをつないでいく。④男女共同参画センターを災害時の女性支援の拠点として明確に位置づけることが大切。⑤女性や高齢者を支援の対象としてだけではなく、担い手として位置付けることで当事者のエンパワメントにつながる。これらを受けて、11月27日には50人が参加して講師の浅野幸子さん(早稲田大学招聘研究員)とともにワークショップで話し合いました。

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