Black Box ~わたしたちも、と声をあげること~


書籍名Black Box
著者伊藤詩織
出版
情報
文藝春秋 2017年
請求
記号
368/イ
※書影:文藝春秋公式ウェブサイトより

年度末にようやく新着図書として配架できました。
わたしは、どうしても、これは読まなければならない、その理由があるのです。
(その理由はわたしの大切な人のためにここでは書かない)

すべての女性が、いや、今は男性も、すべての人が、
この本に書かれていることを知っておくほうがいいと思います。

ニュースなどでは知っていたつもりだったけれど
やはりテレビでどんどん流れていく情報をきちんと理解するのは難しいものです。
この出来事の発端は2015年の話…だったのですね。

著者の伊藤詩織さんが、記者クラブで会見を開くまでにどんなことがあったのか。
どれだけの時間が費やされているのか。
それが、淡々と、当事者として綴られています。

日付、時刻、それらの細かなことまでを整理することがどれほど大変だっただろうと思います。
日本で裁判を始め、事実をあきらかにするためには、膨大な記録が必要です。

思い出したくもない記憶でも、記録として必要な要素を並べ、
何度も何度も整理し説明しなければならない。

暴力の被害者がそれを作成することがどれほど大変か。
まして、魂の殺人と言われる、性暴力の被害にあった当事者です。
実際に本書では「あの日、私は一度殺された」とあります。

この本では、冷静に、時系列に記されています。
けして感情的でも、悲壮感満載でもありません。
だからこそ、すべての人に読んでほしいと思うのです。

だって、妹が、姉が、娘が、妻が、姪が、または大切な誰かが
踏みにじられるかもしれない。

読み進めると気がつくのですが
踏みにじる側と、踏みにじられた側には、気味が悪い温度差があります。

踏みにじった側や、周囲の人間が、
あたかもそれが普通のことのように振る舞うことで
被害者は
「自分がおかしいのだろうか?」
「たいしたことではないのか?」
「自分に落ち度があったのではないか?」などと
追い詰められていきます。

この他にも被害者を事件後に傷つけることを「セカンドレイプ」と呼びますが
このために、日本では性暴力の被害にあっても告発されないことが多いのです。

そして、性暴力の加害者だけではなく、
周囲の「何もしなかった人」も、このセカンドレイプの「加害者」となりえます。

わたし自身、同時期にネットで見たこの動画にはっとさせられました。

これはカナダのオンタリオ州の「セクハラ防止啓蒙ムービー」で、
ツイート主の吉田さんはカナダで映像制作をされている方です。
日本の方にぜひ見てほしい、と日本語字幕をつけてTwitterにUPされていました。
このツイートが注目され、日本版ハフィントンポストでも取り上げられています。

セクハラ・性暴力の目撃者に「見ないふり、ありがとう」 カナダ州政府からのメッセージが痛烈 #MeToo #WhoWillYouHelp https://www.huffingtonpost.jp/2017/12/20/metoo-canada-campaign_a_23312560/

啓発ムービーの中ではさまざまな性暴力が行われます。
その最中に加害者がこちらを向いて
「見ないふりをしてくれてありがとう」と視聴者に礼を言ってきます。
傍観者になってくれて、わたしの悪事を見ないふりをしてくれてありがとう、です。

なにもしない。関わらない。だって自分が巻き込まれるのは嫌だから。

もうやめにしませんか。
いつか、あなたや、あなたの大切な誰かが、被害者になるかもしれません。

日本でも、 #MeToo や#WeToo という取り組みが少しずつ始まりました。

まずはこの本から、手にとっていただけたらと思います。
声をあげる前に、知るだけでも、これからの誰かの助けになるからです。

<追記>
また、この本では、わたしたち公共機関の対応の不足や、
これからやるべきことも記されています。
その点をしっかりと受け止めたいと思います。

S.F