『町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト』

町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト
書籍名町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト
著者猪谷 千賀
出版
情報
幻冬舎 2016年
請求
記号
318/イ

「図書館に勤務している方には、この本はとてもオススメです。」と近所の庄内図書館の館長からこの本を紹介されたのが、昨年の冬。まちづくりの先進事例として、その名を全国に轟かす岩手県紫波町のオガール広場。このオガール広場がなぜ、どのように生まれたのか、またどのように育てられてここまで来たのかを、丁寧な取材に基づいてまとめられた記録が、本著である。
タイトルにもなっている、「紫波町オガールプロジェクト」とは、紫波中央駅前の空間を、図書館を含む様々な施設が融合したコミュニティの拠点として生まれ変わらせる取組みのことである。施設ありきのよくある地方の事例では無い。建築の専門家、公務員、民間のビジネスコンサルタント、図書館司書、デザイナー、そして市民…様々な立場の人々が本気で互いと向き合い、「紫波町の未来をつくるため」と血の滲むような思いで知恵を出しあった努力の結晶、それがオガール広場なのである。
市民をつなぐ仕掛け作りや、地元の主たるビジネスである農業支援など、紫波町の図書館のサービスはユニークで魅力的だ。しかし、先進事例の取組みを小手先で真似したところで、おいそれと同じような場所になるわけではあるまい。「地域づくりは人づくり、人づくりの基本は教育」と一貫した姿勢で考え抜いた結果、立ち昇るようにその場が姿を現す。学ぶべきはオガールに関わった全ての人の「本気」である。折しもこの本を勧められたのは職員研修の場であったのだが、「地域にあなたは何ができるのか」と言う本気度を問うことが、この研修の意図することであったのかも知れない。

(A・E)