ロールモデル No.5 春野 夜明さん(仮名)

1964年生まれ。子ども1人(5歳)、夫と同居。豊中市在住。
勤務先:製造業(従業員数約100人)、大阪支店に勤務(吹田市)
雇用形態:正社員(営業職)
育児休業:1年3カ月取得

転職2回の経験でパワーアップ

大学卒業後、大手流通業の会社に就職し、異動も経験しながら営業事務職に5年間従事した。しかし、昇進・昇格に関して上司の正当な評価を受けていないと感じた出来事があったため、思い切って転職を決意する。二つ目の職場は就労支援関連の公益法人だったが、内情は、とても過酷な労働条件で職員やクライアントを人間扱いしていない状況に愕然とし、1年で見切りを付け退職した。その後、現在の会社である化学系の製造をしている会社に事務職として転職し、吹田市内の事業所で勤務することになった。約10年の事務職従事となるのだが、同時に、専門知識はなかったものの検査や分析という理系分野の業務も担った。先の2回の転職においては、いずれも理不尽だと思う事象が退職の引き金になったし、企業や組織の嫌な部分もたくさん見てしまったが、そのことで自分自身がパワーアップされ一回り大きくなった気もした。しかし、本当の試練はここからであった…。

「育休切り」と「パワハラ」に立ち向かう

いまの職場で10年目のときに妊娠がわかった。当時は、ちょうど育児・介護休業法の改正直後だったため、出産や産休・育休に関する情報収集は新聞等で簡単に得られたし、TVなどのメディアでも情報量が多く助けになった。

職場には「産休・育休の後には職場復帰します」と早い時期から宣言していた。しかし、そのうちに社内の怪しい動きを察知した。代替要員として、臨時や派遣ではなく正社員採用を会社が画策していたことがわかった。3人という少ない人員の事業所に正社員を迎える余裕などないことは分かっていたし、その点を問い詰めても明確な返答はなかった。産休に入った後も育休切りが不安で心配で、気持ちは出産どころではなかった。そして育休中に「復帰するなら東京本社に復帰してもらう」という一方的な電話が突然に会社から入った。怒りでいっぱいだった。そこで、東京の人事部に信頼できる人物がいたので相談したところ、こっそりと然るべき対処を勧められた。その後は、ただただ不当な扱いに対する闘志が湧いてきて、自分で情報収集し雇用均等室に行くことを決心した。均等室では丁寧に訴えを聴いてくれ、会社に対し厳しい行政指導がなされた。世間には泣き寝入りする事例が多い中、我ながらよくここまで闘ったと自分で自分を褒めてあげたいと思う。

しかし、”歓迎されない復帰”を果たしてからは仕事の無い閑職に追いやられた。また、全社員のうち自分だけ定期昇給がなかったり、同僚や上司からの嫌がらせというパワハラともいえる状態が約3年間も継続し、精神的にも相当に追い詰められていった。ふたたび均等室にも訴えたが、この時には思うような結果は出なかった。しかし、これに屈して辞めるという選択をしなかったのは、負けん気と経済的に自立して働き続けたいという強い気持ちがあったからだ。また、この環境を逆手にとって、仕事が与えられないという「無」の時間を自分のプラスに転換するため、勤務時間中は自己啓発に没頭した。

事務職から女性初の営業職へ

転機は、事務から営業へと職種替えになった時だ。この頃、新社長が就任したことが社内の雰囲気を変化させ、女性初の営業職への抜擢にもつながった。東京には女性初の部長職が誕生し、彼女が自分にとっての良き相談相手でもあり、ロールモデルやメンター的な存在にもなっている。また、公正な人事考課制度の導入も進みつつあるなど少しずつ組織が変わり始めている。営業の業務に関しては、自由な裁量もある程度は与えられているので、伸び伸びと仕事ができる環境であるし、やりがいもある。ただ、女性が営業職として活躍することに対し、まだまだ否定的な考え方の人も周囲に多く、それなりの苦労もあるのだが、応援してくれる人や頑張りを見ていてくれる人ができたことはとても心強く、自信を持って仕事に取り組めるようになった。

子どもは幼稚園児になったが、土・日は趣味を活かした副業の関係で自分が外出することもあるので、夫は積極的に家事や育児に関わってくれる。仕事も子育ても副業も、すべてにおいて充実し、バランスのとれた生活を楽しんでいる。

今後は、研修や社員教育制度、メンタルヘルス対策の取組みの必要性などを会社に提案していき、後輩のためにも、働きやすい環境の実現に寄与したい。

働き続けたい女性へのメッセージ

仕事と生活のバランスを考えて無理なくやってほしいと思う。有給休暇が取りにくいという話もよく聞くが、それは勝手にそう思い込んでいるだけのケースもあるようだ。やはり、メリハリのある働き方、他人の顔色をうかがわなくて済む気持ちの良い職場環境が理想だと思う。人は、ともすると平均でありたいとか、人にどう評価されているのかが気になって自身の行動を自己規制してしまうなど、周囲や環境に影響されがちである。

この自分の貴重な体験談が皆さんのチカラになれば嬉しい。ぜひ、自分らしさを失わないような選択のうえに働き続ける道を歩んで行ってほしいと思う。

(インタビュー 2012.11)