ロールモデル No.7 藤原 美幸さん

1970年生まれ。子ども2人(中学1年生、小学2年生)。豊中市在住。
勤務先:株式会社ソラスト(旧:株式会社日本医療事務センター)京都支社 支社長
雇用形態:正社員(総合職)
産休および育休期間:第一子・第二子ともに産前産後プラス半年間

経理担当から積み上げた勤続24年「前向きに生きたい」

高校卒業後、経理のプロをめざして卸会社に就職するも、思っていた業務内容と違っていたし、何よりも女性が長く働けない環境や雰囲気があったため、現在の会社に経理部門を志願して転職した。その後、教育事業部門などを経て、現在は260人の社員を統括する支社長という責任ある立場となった。女性が9割を占める会社であるからこそ自分も頑張るぞという想いから、今日まで働き続けることができたのだと思う。

主任昇格後に第一子を出産、課長代理の時に第二子を出産した。過去には、育児との両立に理解を得られないことなどで悩んだ時期もあった。しかし、当時の会長(故人)に「役職者が出産し、仕事を続ける女性として次のあなたを創っていきなさい。」と言葉をかけられたことを機に、これまでの肩の力が抜け、社内で出産後も働き続ける先駆者として、ここまで実績を積み上げてきた。学生時代から自立心が強く、女性の働き続ける意味や価値をしっかりと認識していたし、めざす方向を明確に思い描いていた。今振り返ると、目標に向かって一歩ずつ前進してきたことで、思いを実現することができたのだと思う。会社の中では仕事を選ぶことはできない。「会社内での立場は自らが行動し勝ち取るものだ」と思ってやってきた。

周囲を巻き込んで働きやすい環境をつくり上げる

今一番感じていることは、同僚や部下に恵まれていたということ。育児との両立のため、「妊娠中は出張できない、残業はできない、転居転勤もできない」など職場では数々の主張をしつつも、一方で、その実現のために工夫もしてきた。仕事と生活のバランスを取りながら自分らしい人生を積み上げてきたという思いもある。時間内に効率よく働くためにはどうしたらよいか、周囲にどう協力してもらえるかを常に考え、提案し、素早く行動に移してきた。ある意味わがままに自分の生き方・働き方を貫いてきたが、周囲の方たちが温かく受け入れてくれたことに今はとても感謝している。今まで困難を乗り越えてこられたのは、社内で培ってきたネットワークや人間関係が一番大きかった。まさに、仕事力とは人間力だと実感している。

働き続けるための「地域との関わり」「子どもの自立教育」

保育所の先生に「地域と関わりなさい」と助言していただいたことが印象に残っている。また、子どもの夜泣きがとてもひどく困っていた時、保健師の訪問制度にも助けられ、育児ノイローゼ状態から救われたこともある。ひとりで悩まず、我慢せず、SOSの声を上げることで気持ちが本当にラクになった。保育所のママ仲間にも遠慮しないで「迷惑をかけてみよう」と子どもの送り迎えなどを頼んだこともある。働く母親同士の連帯はとても心強かったし、情報収集にも役立った。自分が行き詰まってしまう前に、地域のコミュニティなどへ積極的に参加していくことも育児と仕事を両立する上で心の支えになる。

また、出産前後は、行政窓口をとことん利用した。出生届と同時に保育所申請をすればスムーズにいくこと、職場復帰が必要な人材であるという文書を会社に作ってもらい添付すると有利であるなど、いろいろな技も市役所窓口から仕入れてきた。使える制度は全部使ってやろう(笑)という意気込みで情報収集をすることはとても重要だと思う。

そう考えると豊中市は、子育て支援の制度や仕組みが整っているし、人権視点のある教育も盛んで、住みやすい町であるとは思う。しかし、あえて施策に提言したい。働く母親としては、中学校の給食制度をぜひとも導入していただきたい。また、学童保育に関しては利用しにくいと感じている。実施時間延長や対象年齢の拡大は嬉しいのだが、実際には19時までの延長利用をしている人は意外と少ない。一方で母親同士では、夏休みなどの長期休暇期間だけ利用可能になるなど、制度の拡充を期待している。しかし、今はまだ制度が未整備な状況のため、近所の家を拠点とした“自力の第二次学童保育”を実践している。今後も、働く女性の声として改善や要望を行政にどんどん出していきたい。

現在は、母親の介護をしながら育児もこなす忙しい日々を送っている。そのため家事は土日に集中して行っている。

夫とは離婚しているので、子どもの教育には自立を促すことに重点を置いている。家族である以上は、子どもにも生活者としての役割を担ってもらう必要があるからだ。それが女性の就労継続のための条件のひとつであるとも言える。

女性が働くと生産性が上がる

社内にはユニークな取り組み事例がある。残業の多かった部署において、子育て中の女性社員を多く配置したところ、なんと残業が激減し生産性も上がった。女性が働くと効率が良いというのは本当だった。男性社会における効率とは質の違う、段取り力の真骨頂ともいうべき爽快な成果であったと思う。

いま社内では、女性が働きやすい職場環境づくり、多くの女性管理職の輩出という方向へ動き始めている。出産年齢が高くなってきた今、たとえ社内に制度があったとしても、一定の職責に就いた女性が、気兼ねなく利用できるかといえば、厳しい状況だと言わざるを得ない。これからは男性社員にも積極的に育児参画をしてほしいし、男性の部下に子どもができたら、積極的に育児休暇を取ってもらいたい。女性社員だけではなく男性社員にも理解のある風土や環境づくりが喫緊の課題である。自分には率先してこの課題に取り組む使命があるようにさえ感じているし、できる限り関わっていこうと思っている。例えば、体験を語る講演、ダイバーシティ専門部署の創設など、子どもがいる女性社員の好事例を示す機会も必要であると会社に働きかけていきたいと思っている。

社内には子育てしながら支社長としての職務で働く自分のことを知らない女性社員も多い。これからは出産や育児をしながら女性が安心して就労継続できるよう環境を整備していくためのサポートを続けていきたい。

働き続けたい女性へのメッセージ

経験から言えるのは、まずは自分が会社にとって必要な人材になるということだ。権利を主張するには、裏打ちされた努力や実績が必要となるからだ。

そして、使える制度は全て利用し、周囲も巻き込んで、働き続けるための工夫をしていく覚悟がいる。働く母親は子どもに対して、ある種の罪悪感・後ろめたさを日々感じている人が多いかもしれないが、子どもたちが巣立った後の人生は長い。また、出産・育児を理由に能力があっても自制してしまう女性、責任ある立場になることをためらう女性が意外と多い。しかし、最初から諦めてしまうのではなく、できることからやってみる、頼れる人には甘えてみる、という一面も大事だと思う。自分を磨きつつ勇気を持って行動を起こすことで、自ずと道が拓けていく。

女性の人生には、立ち止まらざるを得ない局面が多いが、自分が動くと必ず周りも動いてくれる。ぜひ「自分らしく生きていく」ことの大切さに気づいてほしい。

最後に、女性が働き続けやすい仕事の一つに医療事務があるのでお勧めしたい。ライフステージにより勤務形態を選べることなども魅力の一つだ。

(インタビュー 2013.2)