書籍名 | ろう女性学入門 |
---|---|
著者 | 小林 洋子 |
出版情報 | 生活書院 2021年 |
請求記号 | 369/コ |
本書では、聞こえない、または、聞こえにくい聴覚障害のある女性たちがたどってきた歴史を知ることができ、ろう者であり、女性でもある彼女たちが複合的な差別を受けながらも、前を向き力強く人生を歩んでいく姿が紹介されています。また、「ろう女性学」について知り、理解を深めることができます。
かつて、聴覚障害のある女性は、結婚、妊娠、出産というライフイベントを自分の意思で決めることができない時代がありました。1948~1996年旧優生保護法により、多くの障害者が子孫の出生を阻止されました。中絶という選択肢や強制不妊手術が法律により認められ、子を産むに値する人と、そうでない人とに区別されました。聴覚障害者も聞こえないという理由で、本人の許可なく親が勝手に決めて手術が行われたり、本人には盲腸の手術と称して手術が行われたこともありました。この法律で起こった多くの悲劇により、今もなお、聞こえない女性たちは、心につらい傷を抱え、苦しみ悔しんで生きているのです。
また、ろう者が使う視覚言語である日本手話には、男女二元論や異性愛に基づいた表現が存在し、LGBTQ+のろう者が差別や苦痛を感じてしまうことがあります。今は、LGBTQ+の方々も自分たちの権利を求めていける時代になってきています。みなそれぞれの多様性を認め合い、誰一人排除されない自分らしく生きていける社会をめざしていくことが必要です。
障害のある女性は、障害に対する偏見と女性であることの不利益といった複合的な差別を受けやすく、不利な立場に置かれやすい状況にあります。しかし、彼女たちにとって、女性であり、ろう者であることは、どちらも欠くことのできない自分自身なのです。現在、さまざまな場で活躍しているろう女性たち。納得いかない思いをすることも多く、行き詰りそうになりながらも、自分らしく生きたいと願う勇気と行動力で、ライフキャリアを深めていっているのです。
K.H