書籍名 | 家族終了 |
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著者 | 酒井 順子 |
出版情報 | 集英社 2019年 |
請求記号 | 367.3/サ |
しかし、読んでみると、そのタイトルとは裏腹に、多様化する「家族」に寄せる著者の明るい展望が述べられていることがわかりました。
自分が生まれ育った家族のことを、「生育家族」と言うそうです。
著者は、自分の最後の生育家族であった兄を近年亡くしたことで、あらためて自分の生い立ちを振り返り、自分の持っていた絶対的な縦社会という家族観と現在自分の身の回りに見る、例えば友達親子のような家族のありようとのギャップに驚きながらも冷静に分析していきます。
「家族はいて当たり前ではない」と断言し、従来型の法律婚夫婦に血のつながった子どもという家族だけでなく、法律婚、事実婚、同性婚、また同性異性に関わりなく性と生活を分離させたカップルなど家族の多様化を述べています。
「家族である」という意識や一体感は、外部から与えられるものではないと述べ、自分が家族にかけた愛情がこの先自分に戻ってこないかもしれないが、それでも思いを寄せずにはいられない。経済の原理からは離れた感情のやりとりがなされる場こそが、家族というものなのだろうというところがとても印象深いです。
高度経済成長期に生まれ育った著者と同年代の私には、ああそうだった、懐かしいと思う流行語や社会現象が随所にちりばめられ、楽しい1冊でした。バブル期に成人された方には特にお薦めしたいと思います。
T.Y