書籍名 | 母ではなくて、親になる |
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著者 | 山崎 ナオコーラ |
出版 情報 | 河出書房新社 2017年 |
請求 記号 | 914/ヤ |
とても冷静な育児エッセイだと思いました。
Web河出にて連載されていた記事をまとめた本書。ヨシタケシンスケさんのほっこりする装画も相まって、すてっぷでも手に取られる方が沢山いらっしゃいます。
内容は著者である山崎ナオコーラさんの不妊治療・妊娠・出産、そしてお子さんが1歳になるまでの、子育てにまつわる日々を描いたエッセイです。
妊娠中に「母ではなくて、親になろう」と決めた著者。
「母親らしくないガサガサな歌声でしか子守唄が歌えなくても、母親だからと気負わずにいれば、親として子育てをするのは楽だ」と本文にあるように、町の本屋さんで働く夫と共に「母親」「父親」としてではなく、親として子育てに励みます。
育児エッセイではあるものの、育児のドタバタ感は感じられません。観察と思考を重ねて、著者の人生に現れた子どもと向き合い、夫と家事・育児を分かち合いながら日々を重ねる姿は読んでいてどこかしら安心感を覚えました。ジェンダー視点のある著者なので、「妻だから」「夫だから」「女の子だから」「男の子だから」という窮屈な考えにとらわれていないせいかもしれません。
かと言ってジェンダー平等にもとらわれることなく、子どもには性別丸出しの服も着せて親の価値観を押し付けることなく、将来子ども自身が選択できるように、と考えているところもこの作家さんらしいなぁと思いました。
育児に関するヒントはもちろんですが、「男性であること」「女性であること」「どちらかでなくてはいけないのか」など、社会的な性別イメージに窮屈さを感じている人にも、肩の力が抜けるようなヒントを見つけられる本だと思います。
K・H