犠牲の累進性って?

生きづらい世を生き抜く作法
書籍名生きづらい世を生き抜く作法
著者雨宮処凛
出版
情報
あけび書房 2016年
請求
記号
914/ア

ビッグ・イシューに2006年から2015年まで連載されていた「世界の当事者になる」から厳選した98篇のエッセイをまとめた1冊で、時事問題から個人的なことまで、深い洞察に基づいて鮮やかに描き出されている良著です。

そのエッセイの1つに、「“犠牲の累進性“という言葉を流行らせたい」という言葉が載っているのですが、
「犠牲の累進性」とは、例えばブラック企業などに勤めている人が、パワハラ上司などから、「B社に比べたら全然マシだ!」(→「我慢しろ」→「黙れ!」)と言うロジックで、より酷い状況を比較提示することで、個人の問題をもみ消されてしまうようなやり口のことを言います。

これにひどく感銘を受けた私は、
「雨宮さんに倣ってこの言葉を流行らせるぞ!」
とその日のうちに某F社のSNSにそのことを投稿しました。
すると、東北で被災者支援の活動をしている友人Kが
すぐさま反応してくださり、
「被災地ではこの“犠牲の累進性”の内面化とでも言える
状況が起きています。」と言うではありませんか…。

この場合、「犠牲の累進性の内面化」とは、
「私はいま辛いけれど、Bさんに比べたらまだマシなんだから、
我慢しなければいけない。」と言うロジックで、
自分で自分の辛い気持ちに「黙れ」と言ってしまうこと
を指すのでしょう。
これなどは正に日ごろ多くの人が無意識にやって
しまっていることで、“犠牲の累進性”、なんと業の深い病
なのかと改めて深く考えさせられました。

「誰かの苦しみは、他の誰かと比較して相対化できるような
ものではなく、このような発想が日本人の生きづらさや
ブラック企業の蔓延を助長している。
今、苦しいと思ったら、迷わず声をあげよう!」
雨宮さんからそう背中を押してもらえた気がします。

このコラムに心で「イイネ!」を押された方、
明日から私と一緒に‟犠牲の累進性“を流行らせませんか?

(A・E)