『きりこについて』

きりこについて
書籍名きりこについて
著者西 加奈子
出版
情報
株式会社KADOKAWA
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記号
913/ニ

本書の主人公きりこは、両親の愛情をたっぷりと注がれ、蝶よ花よと育てられた女の子。その見た目は10人中10人が「ブス」と認めるもの。でも両親の愛情に守られたきりこには、人に「ブス」とは認めさせない不思議な魔法がかかっていました。しかしその魔法も、好きな男の子に「ブス」と言われたことで解けてしまいます。

ショックから部屋に引きこもるようになったきりこ。人の世界から離れ、日中は眠り、夜は愛猫ラムセス2世と共に、公園での猫集会に参加する生活を送っていたある日、昼間見た夢をきっかけにある少女と再会します。誰もが「可愛い」と評するその少女にも、見た目から不当な扱いを受けた、深い傷があったのです。

この再会を機に、人の心の痛みを夢で感知するようになったきりこは、関西弁を巧みに操るラムセス2世に導かれ、再び人の世界に戻っていきます。

出会った人々の痛みに触れるなかで、きりこは「見た目」や「中身」にとらわれない、「自分を生きる」ということを取り戻していきます。

終盤きりこがある気づきを得て「ブス」の呪いから解放されるシーンは思わずグッときます。猫のラムセス2世も良い味を出していて最後はほろりとするかも。

きりことラムセス2世の関西弁のやりとりもリズムよく、一気に読めてしまいます。

K.H