「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)


書籍名「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)
著者汐街 コナ/著
ゆうき ゆう/監修・執筆協力
出版
情報
東京 あさ出版 2017年
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記号
498.8シ

きっかけはTwitterで見た冒頭の8P漫画でした。

この本には、たくさんの働く人が、救われるかもしれない、と思いました。

「ブラック企業」という言葉が定着してもう10年くらいでしょうか。
わたしにも「残業時間が160時間」、なんて友人がいます。

冒頭の8P。
主人公は毎月100時間を超える終電帰宅の連続。

…ふと立った最終電車の地下鉄のホームで
「ここに飛び込めば会社に行かなくてすむ!」というアイデアがひらめく。
この本はここから始まります。

会社がイヤで死ぬなんてバカなことはないでしょ!!!
ブラック企業なんて辞めればいいじゃないか!!
みんながそう言います。

でも本当に追い詰められている時に
辞めるという選択肢が見えない状態になっていること。

そのプロセスを、わかりやすく説明してくれた8Pに
わたしは救われました。
そう、これ!これ!こうなっていたんだ!

今、長時間残業の過労死ラインが「月80時間」と定められています。
目安が決まることで、多くの人が
「自分の働き方がヤバい」と自覚できるようになったと思います。
それでも長時間労働を強制される職場は少なくありません。

一方で、日本は、成人の死因のトップが「自殺」です。
理由は「経済「人間関係」であること。

たとえばパワーハラスメントには明確な目安はありません。

たとえ、あなたの残業時間が多くなかったとしても
「線路が怖い」「包丁が怖い」「会議室の窓が怖い」なら
誰かの助けが必要です。

あなたが弱いからでも悪いからでもありません。

この本には、そのSOSの出し方、出してもいいんだ、
ということが描かれています。

人間には個体差があって、
自分で決めた仕事の長時間残業なら平気、という人もいます。
わたしはこのくらい働いてきたから、
あなたもそのくらい出来るはず、と言ってくる人がいます。
あなたの職位なら、これくらい出来て当たり前、と言う人がいます。
他の人はみんな出来ているのにあなただけ出来ない、と言う人がいます。

でも人間には個体差があって
出来ること、出来ないこと、があって
だからこそ、それを補いあって、
一人ではできない成果を出すために、会社という組織で仕事をします。

多様な人がいるからこそ、1+1を2だけではなく、
3にも4にもできる可能性があるのです。
それをコーディネートすることをマネジメントといいます。

それをしないで、「努力が足りない」「能力が足りない」と叱責する。
それがたとえ「会社のため」「成果のため」であったとしても
それはただの「暴力」です。

この国は、真面目に普通に働いているだけで、死ぬことがある国です。
わたしたちは、自分の命を、
働いている「会社」から守らなければならない時代に生きています。

そんな大袈裟な、と思う人は、幸運なだけかもしれません。
誰もがそうなるかもしれない、
そう考えさせられる本です。

一方で、経営者の方にとっても、
何が組織に、従業員に対して必要なのか
非常にわかりやすい本だと思います。

マネジメント力とは、被マネジメントの裏返しですから
従業員の悩みに寄り添うこと、共感することができれば
もっと働きやすい社会になると思うのです。

(S.F)