書籍名 | アリーテ姫の冒険 |
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著者 | ダイアナ・コールス |
出版情報 | 大月書店 2018年 |
請求記号 | 933/コ/児 |
書影出典 | 大月書店 |
新たな女性像を提示したこの作品について、当時朝日新聞の天声人語で紹介され、ひな祭りにちなんで「ひな壇にアリーテ姫も悪くない。」と記されています。「アリーテ姫」の誕生が世間に与えた影響がうかがえます。その「アリーテ姫の冒険」が日本で約30年ぶりに復刊されました。
主人公の名前「アリーテ(Arete)」は、ギリシャ神話に由来し「勇気」を擬人化するのに用いられるそうです。
アリーテ姫は、相手を傷つけたり争ったりせず、人や動植物とも分け隔てなく仲良くなり、次々と立ちはだかる意地の悪い問題を知恵と勇気で解決していきます。
シンデレラ姫や眠れる森の美女などそれまでのプリンセス・ストーリーでは、姫たちは自らの手で問題を解決して幸福になるのではなく、男性の手助けによって幸せになります。これは「男女差別の隠れたカリキュラム」であると言われていました(「アリーテ姫の冒険」(1989年)あとがきより)。
「アリーテ姫の冒険」は、「魔法の指輪」という古くからのおとぎ話の要素を取り入れながら、新しい時代の価値観を子どもたちに示してくれます。
子どもたちが自分らしくいきいきと生きることを幼い時から励まされることによって、性別にかかわらず自立し、全ての命と自然環境が尊ばれる世界をつくってほしいという、作者や出版に携わった方たちの思いは、30年の時を経て、より強いメッセージとなっているのではないでしょうか。
暴力や権力に頼らず、知恵と勇気と慈愛によって難局を乗り越え、人生を切り拓いていくこの精神を、現代の世界のリーダーたちにもぜひ思い出して欲しいと思います。
すてっぷ情報ライブラリーには、この本のほかに絵本版と英語版の「アリーテ姫の冒険」があります。前述の天声人語をご覧になりたい方は、英語版の裏表紙見返しにありますのでこちらもお楽しみください。
T.Y