書籍名 | 最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし 「雇用崩壊」を乗り越える |
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著者 | 後藤 道夫∥編 |
出版情報 | 大月書店 2018年 |
請求記号 | 366.4/ゴ |
私たちは、憲法25条にある「健康で文化的な最低限度の生活」すなわち「ふつうの暮らし」を営む権利があります。「ふつうの暮らし」とは、ワークライフバランスのはかれる生活です。仕事、自分の趣味などリフレッシュする機会や人間関係形成のためのつきあいなどが実現できる暮らしです。調査によると、「ふつうの暮らし」に必要な最低生計費は、税、社会保険料込みでおよそ22~24万円でした。ワークライフバランスを実現できる労働時間は月150時間、つまり、時給にすると1500~1600円程度が必要になります。
しかしながら、現在の最低賃金は、「ふつうの暮らし」には程遠いものです。非正規労働者は、「日本型雇用」の想定のもとでは、あくまでも家計補助のための労働であり、本人が暮らせる必要はないというのが社会通念でした。しかし、現在では、家計補助ではなく、家計の何割かを支える時代となり、また、無配偶の女性が増え、単身あるいは子供を抱えるなど、家計を主とする非正規労働者が増大しており、「家計補助論」による非正規労働者への低処遇の押しつけは実態にあわなくなってきています。
また、非正規労働者のワーキングプアの比率も高くなってきています。
労働者が1日8時間働いてもふつうに暮らすことの出来ない社会では、格差と貧困の広がりを止めることは出来ません。まずは、全国一律時給1000円を達成すること、さらに、時給1500円の実現へ向けて動き出すことが、すべての労働者が人間らしくふつうに暮らせる未来へとつながります。賃金水準が上がれば、長時間労働やダブルワーク、トリプルワークが減り、結果、労災・過労死も減少します。また、結婚して子供を産み育てる若者たちが増える条件も整います。
多様な働き方が必要な現代社会において、最低賃金1500円という目標は、労働者の生活を支える上で根拠のある数字であり、また、労働者が貧困から抜け出せる希望でもあると思いました。
K.H