沈没家族 子育て、無限大。


書籍名沈没家族
子育て、無限大
著者加納 土∥著
出版情報筑摩書房 2020年
請求記号778/カ

数年まえ「沈没家族」という映画を観ました。この本の著者である加納土さんが大学の卒業制作として発表したドキュメンタリー映画を再編集・劇場公開した作品です。今回書籍化されたので、さっそく読んでみました。映画を観た時、オモシロイ「家族のカタチ」だなと感じたのですが、改めて活字にして味わってみるとより深く考えることができました。

1994年生まれの加納土さんは生後8か月の時に両親が離婚。母の穂子さんは「自分のやりたいことをやれる時間がほしい」「いろんな人との関わりの中で土が育ったらよいと思うし、私もそういう中で過ごしたい」という思いから自分の不在時に幼い息子を保育してくれる人を募集し、応じた大人たちと共同保育をスタートさせます。
タイトルとなった「沈没家族」とは、ある政治家の「男が働きに出て、女は家を守るという価値観が薄れている。離婚する夫婦も増えて、家族の絆が弱まっている。このままだと日本は沈没する」という発言を受けて、それなら自分たちは「沈没家族」だと笑い飛ばしたことが発端だったようです。

「沈没家族」とは、そして家族とは何なのかとの思いから、かつて一緒に生活した人たちに著者は会いにいきます。保育に関わってくれた人や母の思い、そして子どもに関わるのは週末だけだった父の葛藤、「沈没家族」で一緒に育った仲間を追いかけながら家族のカタチを見つめなおしていきます。
自分に合ったカタチでゆるく繋がり、そこがそれぞれの居場所になったという「沈没家族」、子育てにも家族のカタチにもいろいろあっていい!と感じさせてくれる作品です。育てられた当人の「誰かがそばにいてくれたら、子どもはだいたいちゃんと育つ」という言葉が明るく響きます。
本を読み終わって、もう一度映画を観たくなりました。
                                 U.M