書籍名 | 隣人X |
---|---|
著者 | パリュスあや子 |
出版情報 | 講談社 2020年 |
請求記号 | 913/パ |
この本は、第14回小説現代長編新人賞受賞作です。
人間に擬態する惑星生物「惑星難民X」を受け入れることになった日本を舞台に、境遇は違っても、同じように安定からほど遠い立場で生きる女性たちの日常を描いた小説です。
主人公は、3人の女性です。ひとりは、新卒派遣社員として大企業に勤めている女性です。その女性の社員証を拾ったコンビニと宝くじ売り場でダブルワークをする女性と、同じコンビニで働いているベトナム人留学生の女性です。彼女は、仕送りのために居酒屋でも働きながら日本の大学進学をめざしています。移民、移住外国人の受け入れ、雇用形態による賃金格差、多様性のあり方などの理想と現実を、3人の女性の日常から知ることになります。
著者のパリュスあや子さんは、人間が持つ理解できないものを排除したいという本音を描いたと言っています。また、惑星難民Xについては、平均的で目立たない人間の姿に変わる理由を、人間は自分たちとは異なる存在を忌み嫌うと理解していて、その存在はまるで空気のように認知されず、要するにいないことになっている「透明の存在」であると言い、自身がフランスに移住した際に同じ立場に立たされてはじめてそういうことに気づいたそうです。
他人からだけでなく、信頼している人からでさえ傷つけられる世の中で、隣人Xが決して人を傷つけないことにより、私たちを傷つけるのはいつも隣人の人間であることを思い知らされたように感じた本でした。
I.K