路上のX

rojyounoX
書籍名路上のX
著者桐野 夏生
出版情報朝日新聞出版 2021年
請求記号913/キ

著者の桐野夏生さんは、DV夫を殺害してしまう同僚を助け犯罪に手を染める弁当工場の深夜パートの主婦たちを描いた『OUT』(1997年)をはじめとして、社会が抱える闇や構造問題からくる過酷な状況で、もがきながらも走り抜こうとする女性たちを数多く描いています。

今作は、居場所をなくした10代の少女たちの物語です。一家離散によって幸せな生活を失った女子高生16歳と、義父(母の再婚相手)の性的虐待から逃れるために家を出た17歳が渋谷の街で出会い、互いに助け合いながら行動を共にします。少女たちは警戒しながらも選択せざるを得ない危うい状況に追い込まれて、被害に遭い深く傷つきます。

「援助交際」「JKビジネス」と聞くと、少女たちが好んで足を踏み入れているように思われがちですが、所持金も住む場所さえない未成年の少女たちにとっては、生き延びていく手段であることに愕然とします。モノとして扱い性的に消費し搾取する男たちや正論を唱えながら見て見ぬふりをする大人たちを尻目に、犯罪すれすれの危険も辞さない少女たちに、ハラハラしながらも肩入れしたくなります。読み始めるとぐんぐん引き込まれ、ほとんど一気に読了しました。

「難民高校生」の著者でありColabo代表である仁藤夢乃さんの解説が巻末にあります。当事者であった自分たちが言葉にできなかった想いや感情を、小説の中の少女たちは言葉にして発信してくれた、加害者のやり口や社会の構造を理解することが必要で、この本には私たちの目を開かせる力がある、「これは私たちの物語だ」と語ります。

「路上のX」である少女たちの存在を、まずは読んで、知って、考えてみることから始まるのだと感じました。

U.M