書籍名 | 女が死ぬ |
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編者 | 松田 青子 |
出版情報 | 中公文庫 2021年 |
請求記号 | 913/マ |
タイトルにもなっている「女が死ぬ」という小説は、2019年にアメリカの文学賞で、心理サスペンスやホラー、ダークファンタジーの要素を持つ文学作品に与えられるシャーリイ・ジャクスン賞の短編部門候補にもなりました。
ストーリーを盛り上げるために、小説のなかで、ドラマのなかで、簡単手軽に「女が」、死ぬ、結婚する、妊娠する、流産する、レイプされる現実がテンポよく描かれています。
また、この本におさめられている「男性ならではの感性」という話があります。著者ひと言解説によると、依頼メールに「女性ならではの」「女性の視点で」と書かれていることが一時期多くて、イラッとして書かれた話だそうです。
「男性ライターが男性ならではの感性で提案した男性向けの新商品は、世間に驚きをもって迎えられた。」と始まるこの話のなかで、「男性が働き続けることのできる社会についてお聞かせください」「男性の理想の職場とは」「男性の結婚と仕事の両立は可能だと思われますか?」という文が出てきます。そういえば、そんなこと聞いたことないなと、男性という言葉になるだけで全く聞いたことがなく、女性に入れ替えると普通によく聞くタイプのものになり全く違和感がありません。
この本は、世間の女性に対する先入観を取り上げています。男女の視点や固定観念を逆転させるとどうなるか、女たちはいかに様々なことを押し付けられているのか、改めて都合よく扱われている女を感じずにはいられませんでした。
とは言え、まだまだ自分のなかにある固定観念にも気づかされました。日々感じる「女らしさ」「母らしさ」、「こうあるべき」へのプレッシャーをこんな風に物語として表現できるんだなと楽しく読み、ストレスが発散されるような感覚になりました。
巻末にある著者のひと言解説が本当にひと言でそちらも楽しめました。
I.K