「女医」カリン・ラコンブ

「女医」カリン・ラコンブ
書籍名「女医」カリン・ラコンブ
著者カリン ラコンブ∥原作
出版情報花伝社 2021年
請求記号498/ラ

この本は、2020年に世界を襲ったCOVID-19パンデミックに、病院の仲間と手探りで対応し、仏メディアで取り上げられ時の人となった女医 カリン・ラコンブが、コロナ禍で奮闘する彼女自身や病院の日常を描いたものです。
主な登場人物は女性初の感染症科長として奮闘する主人公カリン・ラコンブと、感染患者のリヴィアです。
日ごとに増えていく患者とともに、病院では他の科の病床をあてて病床数を増やしたり、危機管理委員会を設置して状況を全体で把握したりと手探りで対応していく中、カリン自身の生活も変わっていきます。マスクや防護服などの配給は十分ではなく、医療従事者も感染していく中、常に感染の可能性のある不安を抱えた状態で医療に従事していきます。
自身の生活では、医療従事者向けの託児施設もなく、娘の預け先にも一苦労な日もあり、仕事以外でも疲れが絶えない日々を送ります。
そんな中でもカリンは、女性に与えられた貴重な機会を減らしてはならないとメディアの前に立つことを恐れず、男性ばかりの専門家との討論や憶測によるインタビューを受ける番組へも出演に応じ、心無い見出しの記事やSNSなどで誹謗中傷に合いながら、感染対策や薬に対する誤解などもわかりやすく周りに発信していきます。病院から戻り、家族や友人との時間を過ごすことで、癒され、気持ちが前向きになったり、「日ごろの感謝を伝えたい」と食事を準備してくれた友人や近所の人たちのやさしさと温かさを力にしたりして日々過ごしていきます。 パリの中心部で一人暮らしをしているリヴィアは、普段の生活の中で感染してしまい、自分だけは大丈夫と思って行動していた事を反省します。容体がだんだん悪くなる中、電話やメールで大切な友達に励まされながら闘病します。カリンは、治るという希望がわずかしかないのに、「若いから十分戦える、完治する確率は高い」と言ってリヴィアを安心させる一方で、戸惑いも抱えます。
カリンはこの本を通して、生活を変えた日々、医療従事者たちが感じた精神的崩壊・興奮、恐怖などを知ってほしいことと、自身のメディア進出で、本来科学的であるべき冷静な議論が論争へと発展し、科学者・医師・政治家に対する誹謗中傷へと変わっていったこと、そして人とのつながりを脆くした時期を乗り越えられたのは、私たちのもつ資質・他者への思いやりなのだということが伝わればと願っています。
またこの本は、フランス語圏でのコミックであるバンド・デシネ(BD)で描かれており、BD作家のフィアマ・ルザーティが担当しています。日本のマンガは一コマが短くスピーディーに進むに対し、BDはセリフやナレーションが多く、一コマで表現される時間が比較的長いのが特徴です。
ぜひみなさんも読んでみてください。

K.K