あの時も「こうあるべき」がしんどかった ~ジェンダー・家族・恋愛~

書籍名あの時も「こうあるべき」がしんどかった ~ジェンダー・家族・恋愛~
著者パレットーク/著  ケイカ/マンガ
出版情報シンコーミュージック・エンタテイメント 2021年
請求記号367.1/パ

女らしさ、男らしさ、といった「らしさ」が社会にはまだまだたくさんあって、そこから派生する「こうあるべき」の枠に囚われて自分らしい選択ができなくなったり、無理やりその枠に自分を合わせて苦しくなったりという経験が多かれ少なかれ誰にでもあるのではないでしょうか。

著者のパレットークは、実話に基づくストーリーでLGBTQ+やフェミニズムについてSNSで発信しているウェブメディア編集部です。本書は、6人の登場人物がその成長とともに遭遇する「こうあるべき」という出来事とそこから感じる違和感を、それぞれの視点から短編マンガで描いています。それに関するミニ解説もなかなか興味深く、働く母の割合、性別役割分担、ステレオタイプ、家父長制とミソジニー(女性蔑視)の関係性、ジェンダーギャップ指数などのジェンダーに関する基本情報とともに、意外に知られていないのではないかという知識や見方に遭遇しました。例えば男の子は青や黒、女の子なら赤やピンクという色の概念。ジェンダーを学ぶ時によく出てくる事例ではありますが、「一体いつから性別と色を紐づけられるようになったか?」という解説は新鮮でした。

全編を通して、誰もが自分の中にもっているかもしれない「こうあるべき」が自分自身を、また他の誰かをしんどくさせてしまっている可能性を示唆していて、改めて考えてみる機会になります。同時に気づかないまま選んでしまっている「こうあるべき」をまずは意識して自分の中にあぶりだしてみる必要性も感じます。

LGBTQ+やジェンダーについての入門書としても、「こうあるべき」をあらためて考えてみたい人にも、楽しみながら読んでもらえる一冊です。

U.M