夫婦別姓 ―家族と多様性の各国事情


書籍名夫婦別姓 ー家族と多様性の各国事情
著者栗田路子/冨久岡ナヲ/プラド夏樹/田口理穂/片瀬ケイ/斎藤淳子/伊東順子
出版情報筑摩書房 2021年
請求記号324/ク

結婚後、夫婦同姓にしなければならないと強制されている国は世界で日本だけです。 日本では30年近く選択的夫婦別姓について争われています。 選択的夫婦別姓について議論されるとき、反対意見として「家族の絆が失われるから」「産まれてきた子どもの姓をどうするのか」などの意見があります。

本書では日本を除く7か国で結婚、出産、子育てをしている日本人ライターがその国の歴史、文化、人間性などから夫婦の姓の選択肢、そしてその姓を選択した家族はどう考え、どう過ごしているのかを書いています。

どの国でも結婚、そして夫婦の姓には歴史と宗教が大きく関わっています。 共通している歴史は男尊女卑で家父長制であったことです。 宗教は欧米ではキリスト教が、中国、韓国では儒教が大きく影響しています。 女性は夫の支配下に入ると考えられていたため、キリスト教圏の国では女性が結婚と同時に夫の姓を名乗っていました。 儒教圏では妻は子どもを産むための「外の者」という考えに基づいた夫婦別姓でした。 つまり、結婚後の姓の扱いには女性差別が深く関わっていたと言えます。 現在、多くの国では男女平等への一環として姓に関しての法改正が進んでいます。

子どもの姓に関してはそれぞれの国で課題を抱えており、日本が選択的夫婦別姓にするならば、諸外国の事情を参考に議論する必要があります。ただ、どのライターも「別姓だからといって、家族に一体感がないことはない。」と書いています。

夫婦別姓の問題を通して、日本と世界との違いや、日本の制度の遅れを気づかせてくれる一冊です。

R.K