書籍名 | 家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった |
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著者 | 岸田 奈美 |
出版情報 | 小学館 2020年10月24日 |
請求記号 | 914/キ |
この本は、父の日記に書いてあった願いをきっかけに、家族の身の回りに起こった愛しいことを書いたエッセイです。
若くして急性心筋梗塞で急逝した父、2年後に倒れ下半身不随になった車いす生活の母、生まれつきのダウン症で知的障害のある弟と長女である著者自身について、家族のいいところをみんなに知ってほしいという気持ちから書かれています。
父から幼稚園の時に英語版のファービーや、iMacをもらい辞書を和訳しながら遊んで、ローマ字入力をマスターし速度ランキング兵庫県1位をとったこと。
著者は「父にもらったもので、私はたくましく育ち、たくさんの人々に助けてもらい、今日も生きている」と言っています。
また弟と旅をしたエピソードでは、誰の手も借りず浴衣を着て、温泉につかり、夕飯の鍋の火をつけたりと、何も教えられていなくてもみようみまねで生きている弟の姿を見て、もし宇宙人が襲来してきても、人類で誰よりもはやく共存できる可能性を感じたといいます。
そしてその時、心無い言葉で心身の不調となり休職していた著者は、自分を責めたり、くよくよ悩むことをやめようと考えられるようになり、会社復帰を果たしたことが書かれています。
長い入院生活や歩けないことに絶望し泣く母との「つらいなら死んでもいい」、「生きていてよかったと思えるようになんとかするから、大丈夫」という言葉のやり取りや、著者が福祉と経営を一緒に学べる大学に進み、「バリアをバリューにする」株式会社ミライロを設立し、3年後に母は社員になって各地で講演をするようになると、できることは何かを考えるようになり、母の目に少しだけ光が灯ったこと、などが書かれています。
トラブルが続々と降りかかっても、その悔しさから面白おかしく考えたり、それを言葉にして書けるのは父からもらった才能であるという著者により、他にも多くのエピソードが書かれています。
あとがきで著者は、どうすれば自分を好きになれるのか、その答えは、「好きな自分でいられる人との関係性だけを大切にしていくこと」だと言います。
そんな愛すべき関係性が詰まったこの本には、字の書けない弟が練習して書いてくれたページ数番号がふられています。
よろしければぜひ読んでみてください。
K.K